アジア進学教育研究センターを設立いたしました

2024年4月1日、アジア進学教育研究センターを設立いたしました。本センターは、日本の進学教育に関する調査研究を行い、保護者や教育関係者に客観的な情報を提供することを目的とした研究機関です。設立にあたり、所長である私から、本センターの設立趣旨と今後の活動方針についてご報告申し上げます。

これまでの教育現場での経験

私は長年にわたって、中国・武漢の武漢平成日本語学校(武漢平成日本語培訓学校)において、教育の現場に携わってまいりました。日本人学校の役割を担う立場として、現地に駐在する日系企業や教育関係者のご家族、すなわち日本人駐在員のお子様方の教育を支援すると同時に、日本への留学・進学を志す中国人学生の進学指導を行ってまいりました。

この二つの異なる立場の生徒・保護者の方々と日々向き合う中で、進学相談という業務の本質について深く考えさせられる経験を重ねてまいりました。日本人駐在員のお子様には、日本帰国後の学習環境への適応や、日本国内での進学先の選定という課題があります。一方、日本留学を目指す中国人学生には、語学力の習得から、日本の大学制度の理解、自分に適した進学先の見極めという課題があります。

異なる文化的背景、異なる学習目的、異なる経済状況、異なる学力層、異なる性格特性──これらの多様な要因を抱える生徒一人ひとりに、最適な進学先・学習環境を提案することは、画一的な情報提供では到底不可能な営みでした。

長年の経験から得た一つの結論

多くの生徒・保護者の進学相談を受け続けた結果、私は一つの結論に到達いたしました。それは、「学習塾や進学先には、万人にとっての絶対的な『一番』は存在しない」という事実です。

ある生徒にとって最適な学習塾が、別の生徒にとっても最適とは限りません。学力、学習スタイル、家庭環境、通塾の利便性、家計の負担許容範囲、志望校のレベルと特性、生徒自身の性格や動機の強さ──これらの要因の組み合わせによって、「最適解」は一人ひとり異なります。

同様に、進学先の選定においても、世間的な評価や偏差値ランキングだけで判断することは、しばしば本人の幸福と長期的な成長を損なう結果につながります。学校の校風、教育方針、学生コミュニティの特性、卒業後の進路傾向──これらが本人の志向と合致してこそ、進学は本人にとって意味あるものとなります。

すなわち、進学教育の領域においては、「客観的に最も優れた選択肢」ではなく、「その人にとっての最適解」を見極めることこそが本質的に重要であるという結論に至ったのです。

日本における進学教育情報の現状

翻って、日本国内の進学教育に関する情報環境を観察すると、以下のような構造的な課題が存在することが見えてまいりました。

第一に、塾・予備校の情報は、事業者側のマーケティング情報が中心を占めており、保護者が客観的な比較判断を行うための中立的な情報が十分に提供されていません。第二に、口コミサイトや比較サイトの多くは、広告掲載料に依存したビジネスモデルを採用しており、情報の中立性に疑問が残るケースが少なくありません。第三に、進学にかかる費用は決して少額ではなく、家計への影響も無視できないにもかかわらず、費用構造の実態を体系的に分析した情報は限定的です。

学習塾も、進学先となる学校も、家計にとって決して小さくない負担を伴う選択です。だからこそ、その意思決定は、十分な情報と適切な分析に基づいて行われるべきです。そして何より、選択の基準は「世間的な評価」ではなく、「その家庭、その生徒にとっての最適解」であるべきだと、私は確信しております。

本センター設立の趣旨

このような問題意識のもと、日本の進学教育の領域においても、「その人にとっての最適解」を見極めるための客観的・専門的な情報基盤を構築することが必要であると考え、アジア進学教育研究センターの設立に至りました。

本センターは、以下の4つの研究分野を柱として活動してまいります。

  • 学習塾市場分析:首都圏を中心とした学習塾・予備校の市場構造、料金体系、指導形態の比較分析
  • 受験制度研究:高校受験・大学受験の制度変化、地域ごとの入試特性、志望校選定の考え方
  • 教育費調査:家計における教育費の実態、学年別・指導形態別の費用構造、教育ローン活用の現状
  • 塾評価方法論:合格実績・口コミ・費用対効果など、塾を客観的に評価するための指標設計

これらの研究領域において、独自の調査データを収集・分析し、その結果を保護者・教育関係者に対して継続的に発信してまいります。また、各分野で実務経験・専門知識・実体験を持つ専門家を「認定アドバイザー」として認定する制度を設け、本センターの研究活動と連携した情報発信を支援する体制を構築しております。

今後の活動方針

本センターの活動を通じて目指すのは、進学教育に関わる保護者・生徒・教育関係者の皆様が、それぞれの状況・目的・価値観に応じた最適な選択を行えるような情報環境の整備です。

「みんなが選んでいるから」「偏差値が高いから」「有名だから」という理由ではなく、「我が子にとって、我が家にとって、本当に意味のある選択は何か」を考えるための材料を、客観的・専門的な調査研究を通じて提供してまいります。

少なくない経済的負担を伴う進学教育の選択であるからこそ、その選択は、十分な情報と納得感に基づいて行われるべきです。本センターは、その意思決定を支援する第三者的な研究機関として、誠実に活動してまいる所存です。

今後の本センターの活動に、何卒ご注目いただけますと幸いです。

2024年4月1日
アジア進学教育研究センター
所長 大沢 郁夫

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